研究部門の研究領域

 今日、電磁波レーダーを用いて地下の空洞を直接探査する技術は広く普及している。しかし、発見率の精度は80%程度であり、精度向上が喫緊の課題である。
(株)カナン・ジオリサーチが開発し、特許取得済みの、世界でも最先端の技術であるGMS3は非破壊で迅速かつ簡便な方法で、地盤内空洞やコンクリート床版の劣化性状等を把握できる。これを活用し、今後増大することが見込まれるインフラの維持修繕業務の効率化に資する研究開発を進めることが大いに期待される。そこで、本部門の研究内容としては、以下のような基礎的な課題から実務的な課題、更にはアジア圏に展開を図るための取り組みを行う。

1) 地盤内空洞識別精度の向上
 今日、電磁波レーダーを用いて地下の空洞を直接探査する技術は広く普及している。しかし、発見率の精度は80%程度であり、精度向上が喫緊の課題である。
空洞発見の精度の向上を目指して模型実験と現地調査を併用して識別能力の限界を解明する。例えば、空洞の大きさと形状、空洞の地表からの深さ、空洞間距離などが空洞識別に与える影響を解明する。これらの膨大なデータをもとに、空洞識別チャートを作成し、実務に積極的な展開を図る。現在の空洞発見率は8割程度であるが、本取り組みにより、発見率9割以上をめざす。
2) 空間情報調査解析技術者の技術力向上策の検討
 地盤内空洞の的確な調査と解析のためには、担当する技術者の能力向上が必須である。そのための初級コースから上級コースに至るまでの研修制度ならびに資格制度の検討を行い、実施する。それを通して路盤の空洞調査結果の精度の向上ならびに調査結果の精度の保証を図る。
3) 空間情報の調査と解析に関する総合的研究
 空間情報の調査と解析に関して、毎年のように多くの報告がなされるとともに研究論文や報文が出されている。そこで、これらの調査データならびに研究成果を取りまとめるとともに、本寄付講座で実施する基礎から応用に至るまでの各種の研究成果も取り入れた形で従来の研究成果の集大成を図り、全国初、ひいては世界初の技術書として刊行する。
4) 調査事例成果のデータベース化と実務マニュアル作成への展開
 既存の膨大な調査事例の収集とデータベース化に取り組み、実務に役立つ事例集の整理を図る。これらを通して空洞の発見率の向上を図る。
それと共に、従来の研究成果を集大成して、電磁波探査の基礎、調査方法、解析方法、解析結果の解釈をまとめ、代表的な調査事例に基づく空洞の判別方法などに関して、これまでの成果を集大成してまとめ、併せて実践的な技術書として取りまとめ、発刊する。
5) 大量退職と少子高齢化社会到来を踏まえた社会資本整備にかかる人的資源と技術伝承のあり方等に関する研究
 団塊の世代が定年退職を迎える一方、地方公共団体を中心に財政健全化の名の下に技術系職員の採用が削減された結果、技術伝承の受け皿となるべき世代の職員の欠落や技術力の低下が指摘されている。こうした状況のもと、国は権限代行や技術支援などの政策を打ち出し、地方の技術力支援を図っているが、長期的な課題としてこれに加えて様々な方策が必要と考えられる。そこで、地域における社会資本整備の担い手である地方建設会社における技術伝承の現状等に関する考察といったこれまでの研究成果を基礎に、調査対象を拡大するとともに、引き続き人事・入札・情報の観点から対応方策を検討する。また、公共事業への批判的風潮を分析するとともに、これを踏まえた官民の情報発信の方策に関する研究を進める。
6) 空間情報調査解析研究のアジアネットワーク構築
アジア圏では、近年の経済発展に伴ってインフラ整備が急速に進んでいる。しかし、集中豪雨など自然環境が厳しい上にインフラ整備技術が今一つであることも重なって、路盤の空洞問題が多発している。アジア 各国から、本空間情報調査・解析手法に関する関心は極めて高い。 そこで、アジア圏各国の研究者、技術者、行政担当者などを構成メンバーとする「インフラ空間情報調査解析研究会(仮称)」を設立し、アジア圏における広範な研究ネットワークを主導する。また、実務展開を図る基盤を造成する。